水災 について
熊本県で65人が亡くなるなど甚大な被害をもたらした、先月4日の「令和2年7月豪雨」から1か月が経過しました。
コロナ禍でのボランティアの人手不足に加え、この猛暑の中での復旧作業を思うと心が痛むばかりです。
今回は、火災保険の水災補償について触れてみたいと思います。
まず、水災(水害)とは、台風や暴風雨、豪雨などによる洪水、高潮(たかしお)、土砂崩れなどによる災害のことをいいます。
都市部では、集中豪雨の際に、大量の雨水がマンホールや側溝から地上にあふれる都市型水害もみられます。
降水量の多い日本に住む私たちは、水災と隣り合わせの生活を送っています。
水災で想定される被害の例としていくつか挙げてみます。
・台風で近くの川が氾濫し、床の上まで浸水し家具も水浸しになった。
・集中豪雨による土砂崩れで、家の中に土砂が流れ込み被害に遭った。
・ゲリラ豪雨でマンホールの排水が追いつかず、浸水被害に遭った。
・記録的な大雨により高潮が発生し、海水が防波堤を超え被害に遭った。
・記録的な大雨で土石流が発生し、家が流されてしまった。
・台風による大雨で、車が水没してしまった。
上記の被害例は一部にすぎませんが、水災による被害は、建物だけでなく、建物の中にある家財や人命にまでおよびます。
水災で建物や家財が、「所定の損害」を受けたときに補償してくれる保険が火災保険です。
一般的な火災保険の水災で補償される災害は、「洪水」、「高潮」、「土砂崩れ」の3種類となります。
「洪水」は、河川の水量が急激に増加して発生した洪水や、融雪による洪水、
ゲリラ豪雨などにより排水が追いつかず床上浸水となった被害も含まれます。
「高潮」は、台風や発達した低気圧などにより海水面が普段より著しく上昇することにより、
防波堤などを超えて海水が流れ込み、浸水被害に遭った場合に補償されます。
「土砂崩れ」は、大雨や集中豪雨などにより、山の斜面や崖などの土砂が崩れ落ちる被害や、
川底の土砂や泥が一気に流される土石流の被害も含まれます。
また、火災保険では、保険の対象を「建物のみ」、「家財のみ」、「建物と家財」の3つの中から選びますが、
どのように選択するかによって、水災に遭った時に補償される損害が異なります。
一般的に、火災保険の水災補償では、下記のいずれかの支払要件に当てはまった場合に、損害保険金が支払われます。
・床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水を被った場合
・再調達価額の30%以上の損害を受けた場合
「損害保険金(保険金額が上限)」=「損害額」-「免責金額(自己負担額)」
ここで注意が必要なのは、火災保険の水災補償は、免責金額を除いた損害額の全額を補償するものばかりではないということです。
保険会社によっては、保険料を抑えるために、損害保険金の支払要件を厳しくしたり、支払割合を下げたりする特約が付いているケースがあります。
例えば、床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水を被っても、再調達価額の15%未満の損害の場合は、
「保険金額の5%(100万円限度)」しか受取れないというような補償内容です。(保険会社により支払割合や限度額が異なります。)
この場合は、水災補償を付けていても十分な補償が得られず、被害に遭った建物を再建築したり、家財を購入することができない可能性があります。
このように、損害保険金として受取れる金額は、各保険会社の商品や契約の内容によって異なりますが、
最近の火災保険では、上記のような複雑な支払要件をなくし、水災での損害を全てカバー(保険金額が限度)するような商品も出てきています。
戸建住宅を所有している人は「建物」だけを保険の目的としているケースもありますが、
水災では、建物だけでなく家財にも被害が出ることが多いため、保険料と補償のバランスをよく検討しましょう。
水災補償が受けられない主な例として、次の3つがあります。
・地震による津波や土砂崩れによる被害
津波も土砂崩れも水に関わる自然災害ですが、地震が原因で起こる津波や土砂災害による家屋・家財の損害は、地震保険の対象となります。
これらに備えるためには、火災保険にセットして地震保険に加入する必要があります。
・水濡れ、漏水による被害
火災保険の「水災」と混同されがちなのが「水濡れ」による損害です。
給排水設備の破損や詰まりなどの事故による漏水や、マンションの上階からの漏水で建物や家財が損害を受けたような場合は「水濡れ」の補償対象になります。
・風・ひょう・雪による被害
自然災害でも、台風や暴風などが原因でガラスが割れたり家屋が破損したりする損害は「風災」の補償対象となります。
また、雹(ひょう)や大雪が原因で屋根や雨どいが破損したというような損害は、「雹(ひょう)災・雪災」の補償対象になります。
市街地にあるマンションの高層階に住んでいる人は、浸水被害は考え難いため、水災補償を外しても問題ないでしょう。
一方、戸建住宅はもちろんのこと、市街地のマンションでも低層階に住んでいる人や河川や海、山の近くにあるマンションに住んでいる人は、
近隣地域の水災の危険度を確認する必要があります。
水災補償を付けておいた方が良いかを判断するには、国土交通省や各自治体が公開している「ハザードマップ」が有効です。
ハザードマップでは、洪水や土砂災害、高潮などの自然災害で被害が想定される地域や被害の程度を知ることができます。
たとえ、水災による被害が小さいと想定される地域に住んでいても、家の基礎の高さが低かったり、
1階部分が半地下になっていたりする建物は床上浸水の可能性もあるため、補償を外す場合は慎重に判断しましょう。
水災補償を外すことで保険料の節約につながる場合もありますが、建物の立地条件や構造などを考慮の上、
しっかりとした備えをしておきたいですね。
ご不明な点、ご要望などございましたら、お気軽にお声掛けください。