コラム
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失火責任法 と 類焼損害 について

先日 足利市で発生していた山林火災の鎮圧が発表されました。

原因については究明中とのことですが、例えば 自宅が火災になり、

その原因が他人にある場合などの賠償責任保険への請求の可否と火災保険の関係はどうなるのでしょうか?

 

今回は、失火責任法と類焼損害の観点も含め、見ていきたいと思います。

まず、我が国には失火の責任に関する法律明治32年3月8日法律第40号)があり、簡単に説明しますと、

「失火による類焼で隣家に損害を与えてしまった場合でも、重過失が無い限り損害賠償責任を負わなくてもよい」 とする法律です。

この法律により、「火元となった場合には、賠償のための負担を負わなくて済みます」が、

逆に「隣家から火をもらってしまった場合は、賠償してもらうことができない可能性が高い」です。

つまり、自宅は自分自身の火災保険をしっかり付保して守っておくことが大事です。

 

( 補足ですが、「重過失」とは、わずかな注意さえ払っていれば予見、防止できたのにそれを漫然と見過ごしたような状態です。

重過失に相当するかは個々の案件の状況に応じて判断されます。

例としては、天ぷら油を入れた鍋をガスコンロで加熱したまま長時間その場を離れて火災に至った事例や、

寝たばこの危険性を認識しながらそれを続けて火災に至った事例などが認定されています。

故意や重過失によって火災が起きた場合には失火責任法は適用されず、火元に損害賠償責任が発生しますが、

重過失を問えない場合には、相手方に損害賠償請求できないということになります。)

 

上記に関連して、よくお問い合わせを頂く質問があります。

Q : 隣家を類焼させて加害者となってしまった場合、「個人賠償責任保険・特約」で補償できますか?

A :「個人賠償責任保険・特約」は、事故によって被保険者に「法律上の損害賠償責任が発生した場合」を補償の対象とする保険・特約です。

一般的(重過失がない限り)に、類焼による損害は「失火責任法」によって損害賠償責任が発生しないため、

この保険・特約の補償の対象外となります。

 

Q : 隣家を類焼させて加害者となってしまった場合、法律上賠償義務がない場合でも保険で対策することは可能ですか?

A : 類焼損害補償特約をご準備ください。

 → 類焼損害補償特約」とは、

保険証券記載の建物から失火等で他人の住宅や家財が類焼し、類焼先が加入している火災保険等で十分に復旧できない場合、

不足分を再調達価格で補償する特約です。

(AIGの場合:保険期間を通じて1億円限度。ただし、長期契約の場合は各契約年度1億円限度)

 

 

 

※類焼損害補償と失火責任法

前述のとおり火災を起こしてしまい、近隣の家を類焼させてしまった場合、

通常「失火責任法」により、失火者(失火元)に重大な過失が無い限り、隣家への損害賠償責任は発生しません。

しかし、「失火責任法」で守られていても、被害者(隣家)が自分の保険で現状回復できないとなると、

ご近所の方と事故以前のような関係を維持するのは難しいと思います。

そのようなケースで、類焼損害補償特約は、類焼被害者が自身で加入している火災保険では補いきれない場合や、

類焼被害者が火災保険に加入していない場合に、失火者がその損害を負担することで、

ご近所付き合いも少しは円滑になり、失火者が同じ土地で生活することをサポートできる特約です。

 

個人賠償責任特約や類焼損害補償特約の補償範囲について理解しておくこと、

またご加入の火災保険にその特約が付いているかも含め、きちんと確認しておくことが大切ですね。

ご不明な点、ご要望等ございましたら、お気軽にお声掛けください。

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