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従業員の退職金積立、「30万円枠」をご存知ですか?

従業員の退職金制度は、従業員のモチベーションを向上させ、長く働いてもらうこと、

優秀な人材を確保・採用すること等に繋がります。

ただし、一度導入すると、沢山のお金が必要になりますので、積立てるには継続性と計画性を持ち、

効率の良い方法を選ばなければなりません。

 

法人契約の生命保険は、かつて「節税商品」として人気があり、特に保険料の「全額損金」や

「2分の1損金」等の扱いが可能で、解約返戻率が高い各種の「○○定期保険」という商品が多く契約されていました。

(「逓増定期保険」、「長期平準定期保険」、「生活障害保障型定期保険」等)

 

しかし、2019年7月以降は、保険料の損金算入ルールが変更になり、法人契約生命保険の活用法は大きく変わりました。

前述のいわゆる「節税」目的の活用は、事実上も難しくなったと言われていますが、そうは言っても、

依然として、会社のお金の問題を解決するのに役立つものであることに変わりはありません。

また、各生命保険会社も、新ルールの下での加入のメリットを見い出し、それに合った新商品を開発、発売しています。

そこで今回は、法人契約生命保険について、新しい税務処理のルールを簡単に解説した上で、

知っておくと便利な活用法のひとつである「30万円枠」についてお伝えします。

 

新ルールは、解約返戻金のピーク時の返戻率に応じて損金算入割合を決めるものです。

以下の4つに分けて説明します。

  1.  ピーク時の返戻率50%以下
  2.  ピーク時の返戻率50%超~70%以下
  3.  ピーク時の返戻率70%超~85%以下
  4.  ピーク時の返戻率85%超

 

1.ピーク時の返戻率50%以下の場合

保険料は全額損金算入となります。

解約返戻金を受取ると、全額が益金(雑収入)となります。

 

2.ピーク時の返戻率50%超~70%の場合

2パターンに分かれます。

  • 被保険者1人あたりの保険料の年額が30万円以下の場合(※)
  • 被保険者1人あたりの保険料の年額が30万円超の場合

 

 被保険者1人あたりの年間保険料が30万円以下の場合 (※)

全額損金に算入できます

被保険者は複数名でも、役員でも従業員でもOKです

また、1社あたりですので、会社が複数ある場合はそれぞれ別々に適用可能です。

(A社とB社の役員を兼務の場合、その人についてA社とB社で別々に30万円以下で加入すれば、

いずれも全額損金扱いが認められます。)

 

 被保険者1人あたりの保険料が30万円超の場合

以下の3段階に分けて計算します。

  1. 最初の「40%にあたる期間」 → 6割損金(4割資産計上)
  2. 始期から起算して「40%超~75%にあたる期間」 → 全額損金
  3. 始期から起算して「75%超にあたる期間」 → 164%損金

例えば、保険期間40年の場合ですと以下の通りになります。

  1. 最初の16年間 → 6割損金
  2. 次の14年間 → 全額損金
  3. 最後の10年間 → 164%損金

解約返戻金を受取った場合は、それまでの資産計上額総額を差引いた額が益金(雑収入)となります。

 

3.ピーク時の返戻率70%超~85%の場合

以下の3段階に分けて計算します。

  1. 最初の「40%にあたる期間」 → 4割損金(6割資産計上)
  2. 始期から起算して「40%超~75%にあたる期間」 → 全額損金
  3. 始期から起算して「75%超にあたる期間」 → 196%損金

保険期間40年の場合、以下の通りになります。

  1. 最初の16年間 → 4割損金(6割資産計上)
  2. 次の14年間 → 全額損金
  3. 最後の10年間 → 196%損金

解約返戻金を受取ると、それまでの資産計上総額を差引いた額が益金(雑収入)となります。

 

4.ピーク時の返戻率85%超の場合

この場合の新ルールが最も計算が複雑です。

簡単にいうと、「1-(最高解約返戻率×9割)」が損金算入割合となります。

解約返戻金を受取ると、それまでの資産計上総額を差引いた額が益金(雑収入)となります。

 

ちょっと長くなりましたが、上記(※)の部分が、いわゆる「30万円枠」といわれる仕組みです。

整理すると、以下の2つの条件を満たす場合は、保険料の全額を損金算入することが可能です。

最高解約返戻率が、50%超70%以下

被保険者1人あたりの年換算保険料相当額が30万円以下

(保険料相当額には、他の保険会社で加入している2019年7月8日以降の契約を含みます。)

(注意!) 契約後、追加加入により年換算保険料相当額が「30万円を超えた」場合

追加加入以降は、(追加加入以前から加入していた契約を含めて)「6割損金」扱いに変更となります。

 

この仕組みは、養老保険と違い、いわゆる「全員加入」でなくても上記2条件を満たせば、保険料の「全額損金」扱いが可能で、

(被保険者は各役員・従業員となりますが)解約返戻金の受取人は会社(法人)となりますので、

保険料を損金計上しながら内部留保の積立て(役員・従業員の退職金の原資や事業資金としての活用可)が可能です。

万が一の場合も、死亡保険金を会社が受取り、死亡退職金や事業資金としての活用も可能です。

 

この他、従業員の退職金積立を目的とした方法は、養老保険や中小企業退職金共済(中退共)等が一般的ですが、

それぞれメリットやデメリットがありますので、違いをきちんと把握した上で、計画的に継続していくことが重要です。

 

今回ご案内した「30万円枠」は、養老保険や中退共の制度導入までは踏み切れないが、

可能な範囲で計画的に積立てをお考えの会社にお薦めのプランです。

 

生命保険を活用したプランは、その目的や経営者のお考えに応じて様々なご提案が可能です。

ご不明な点、ご要望等ございましたら、お気軽にお声掛けください。

 

経営者保険の見直し について | 株式会社 Heart Island (heart-island.com)

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